デスペリア


自殺しようとした。


どうせ助からぬ身だと、ならば早々に“必死を救おう”かとキツは剣を喉に当てようとしたが。


「お前は、なんで人間を殺すんだ?」


他愛ない気まぐれを感じた。


言葉が通じるとは思わなかったが、なんとなく、死地にいる者同士で親近感が持てて、キツは黒い魔物に話しかけた。


魔物が顔をあげる。魔物の種類は多く、なり形は様々だったが、この黒い人形はよく見る物体であり、人間としてはやりやすい部類だった。

何せ、人間形。
力も、スピードも、人間のそれと変わりなく、一番殺しやすかった。


雑魚。
以前、誰かが言っていた。


顔をあげた魔物は、相も変わらず、餌を前にした獅子のようにヨダレらしく紫の液体を吐いていた。


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