デスペリア
すっきりした。スカッとした。晴れはしないが、心のもやは薄くなり、肩の荷が軽くなったようにも感じたのだ。
「ああ……」
拳を解く。
目の先には逃げる人間。
排除すべき障害であり、悪の化身にして、怒りの象徴。
なのに、今となってはもはや何かを思う気も失せた。
――いったい、なんでこんなことになったのだろう。
いつの間に、こんな醜い心が生まれ、それが綺麗の皮をまとったのか。
自分の行動に何の疑問も浮かばなかった。
それが普通であると思い、信じていたんだ。