デスペリア


指を組んでいる総帥の人差し指が、自身の甲を軽く叩く。


「確かにな。我らが応援を送れば、壊滅的な被害はなくなり、多くが存命するだろう。だが、他国の奴らの命など救って何になる」


「命に自国も他国もありません。救える命は救うべきです」


「ならば、人間と魔物はどうだ。あちらも命だが」


「私もそこまで聖人ではありませんので。悪と決めつけた輩の命まで天秤にかけることは致しません」


「融通がきくようで、もっとも人間らしい美化精神だな」


皮肉げに笑い、総帥が初めてニズカを見た。


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