デスペリア
「それでも、万の命が救われるならば、“私も救われた”と言いきります」
尚も言葉を出したのは総帥の要望に答えるためだった。
総帥が求めているのはニズカの本心。ならばいずれ、本心を口にしなくなったら要らないモノいりとなろう。
どちらに転んでも崖だった。ギリギリの綱渡りに違いなく、ニズカは毎度ながら、総帥の圧力というのが自分の心臓を握っていることから来ると実感する。
総帥が指を解く。
「それもまた、一つの“欲”か」
ひじ掛けに手を置き、静かに立ち上がる。