デスペリア


魔物が地面を指で引っ掻き、顔を下げた。


「同じなんだ。同じなんだよ……。我らも人間も。同じなんだ……。なのに、どうして」


キツの手から剣が落ちた。どうやら叫び続けて、一抹の体力がなくなったらしい。


「魔物だ……、魔物が全部、わる、い……」


目が開かない。
声を出す度に、熱いものが喉を焼く。


「言葉が同じというのに、通じぬか」


「魔物が……、まも、の……」


最後まで恨み節を語り、先に逝ったのはキツの方であった。


すぐに自分も後を追うことになるだろうと、魔物は息を大きく吸う。


「同じだった……。だからこそ、いけなかったのか。どちらが悪いなどと言えず、良いとも語れない」


いったい、この“メビウスの輪”はいつから始まったのか。


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