デスペリア
種族種族と言うが、同じモノと見てしまえば、どちらもただの生命だ。
生きているんだ。なのに殺し合っている。
憎いだろうが、殺意を捨てた魔物がひどく利口で――
「逃げただけかよ……」
ひどく残酷に見えた。
組み上がった死の螺旋からこの魔物は逃げたのだ。
灰目の魔物とて分かっているのだろう、だから許しなど必要ないし、ただあるがままを生きて、安全地帯を踏むだけだ。
「そなたも、去れ」
あえて、『逃げろ』と言わなかったのは魔物なりの気遣いだったのか。