デスペリア


種族種族と言うが、同じモノと見てしまえば、どちらもただの生命だ。


生きているんだ。なのに殺し合っている。


憎いだろうが、殺意を捨てた魔物がひどく利口で――


「逃げただけかよ……」


ひどく残酷に見えた。


組み上がった死の螺旋からこの魔物は逃げたのだ。


灰目の魔物とて分かっているのだろう、だから許しなど必要ないし、ただあるがままを生きて、安全地帯を踏むだけだ。

「そなたも、去れ」


あえて、『逃げろ』と言わなかったのは魔物なりの気遣いだったのか。


< 74 / 119 >

この作品をシェア

pagetop