デスペリア
(一)
チルチの友達はタンスの中にいた。
「ミュミュ、ご飯だよー」
「ミュッ」
可愛らしい声に愛らしい声。
チルチがタンスを開けると、服の奥から、黒色をした生物が出てきた。
手のひらサイズのそれは耳が長く、犬歯が口からはみ出るほど長い。
ミュミュと名づけられたそれはチルチの友達であり、魔物であった。
「今日はねー、メロンパンにチョココロネにクロワッサンにジャムパンだよ」
「ミュッ」
一つ一つ買ってきたものを出して並べられたパンの前に、お座りをし、うずうずそわそわなミュミュであった。