脇役≠ヒロイン
「さて、終ったし蓮達のとこ行こっか」
多分向こうも終わってるだろうし、そう言ってにこやかにこっちに来た東雲はさっきまで喧嘩(と言う名の一方的な暴力に見えた)をしていたとは思えない。
「うさぎちゃん?大丈夫?」
「へ、平気」
「そう?おんぶしてあげようか?」
「は?・・・バッカじゃないのっ?!」
伸ばしてくる東雲の手を叩き落として、千里の手を引いて歩き出す。
「あ、おんぶじゃなくてお姫様だっこが良いの?」
「違うから!」
尚も横に引っ付いてからかって来る東雲を、振り切るように歩くスピードを早める。
「あずさー、は、速い」
「あ、ごめん」
引っ張られていた千里が止まったから私も必然的に止まる。
「あ、あの、東雲君助けてくれてありがとう!」
追い付いてきた東雲に千里が頭をペコッと下げた。
「千里ちゃんは素直だねぇ」
イイコイイコと言いながら千里の頭を撫でて、意味ありげに私を見る。
「~~~~っ、あ、ありがと」
ぼそぼそと小さくでお礼口にする。
「ん?なぁに?もう一回言って?」
私をニヤニヤと見下ろす憎たらしい顔を殴ってやりたい。
「っ、もう言わない!!」
「いっ?!」
顔の代わりに、お腹を一発殴って東雲の横をすり抜けた。
「あ、梓~」
千里が、焦ったように後ろから呼ぶけど振り返らない。
この赤い顔は見せれない。
「照れちゃって可愛いーの」
照れに任せて先を歩く私には、東雲が小さく呟いた一言が聞こえるはずも無かった。