十†字†路
「さて―…」

零と一緒に振り向く。
二人は怪しげで不安げな顔で、ワタシ達を見ていた。

「アタシ達はこれで帰るとするよ。今日のところは自己紹介だけだね」
「もう帰るのかい?一体何しに集まったんだか…」

庵樂幸菜の不幸を、何も解決出来ずに自己紹介だけで終わった事に不満を漏らす宝杖さん。
やはり、かなり生徒である庵樂幸菜を心底心配しているようだ。

「まぁロリコン変質者だっていう誤解を解いておきたいからね。自分の未来がかかっているヤツが、ロリコンで変質者だなんてヤだろ?」
「ソレはイヤだね」

少女の代わりに宝杖さんが答える。
実に失礼な女性達だ……

宝杖さん…か。
彼女からは不幸は見えない。
実に健康な運命と呼べる。

……だが、
庵樂幸菜…彼女は健康でも健全でも無い。
禍々しき不幸を身に纏い、今も不安定に生きている。

不幸と不運の隣り合わせ。
直視することさえキツイ…
良くないモノでグチャグチャにコーディネートされた、芸術と呼ばれるガラクタ。
そんな存在だった……

ワタシはそんな彼女の不幸をボンヤリ視ていた。

不幸なんかじゃない、零はそう言うが…
確かに不幸と呼べないぐらい、不幸であった……

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