十†字†路
気が付くとワタシ達二人は無言で歩いていた。

ワタシは少女の事を考えていたから無言になっていたが…零は何を思い、無言で歩いているのだろうか?

ボンヤリと、そんな事を考えながら零を見ていたら、急に彼女は身を翻し、ワタシを見た。

「あの不幸少女を助けるのか?」
「ん…?あぁ、必ず救うつもりだよ。この身がどうとなろうと、ね」

何故か、
彼女は哀しい眼をしていた。

あの日の母の様に…
マヨイは治るよね?とワタシが泣きながら訊いた時の母の様に…
悲しい哀しい眼をしていた……

「そっか。ま、アンタの好きにしな。アタシは紹介役なだけだからさ」

クルッと回転し、ワタシに背を向けて再び歩き出す。

「アタシの性……命が……」

消えそうな程の小声で、彼女の言葉が微かに耳に入った。

アタシの性……か。
確かに彼女の性で、ワタシは庵樂幸菜に再び出会えた。
もし、彼女がいなければ二度と出会う事も無かったかもしれない。

ワタシの運命は、やはり彼女の存在により、神様向けの不幸へと進んでいるのだろう。

自身の不幸が視えるなら、彼女の傍にワタシは近寄らないかもしれないな……

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