十†字†路

暗路2・不幸装置~Man~

◆ ◇ ◆



交番を出て歩く。
救急車のサイレンはもう聴こえない。

「だから君の不幸は危ないって警告してあげたのにな…」

一時間程前、駅周辺を歩いていると予知が視えた。

ワタシの予知は大抵が写真数枚をパラパラと捲る様に、コマ送りで視れる。
より不幸な予知ほど鮮明に。より不幸な予知ほど長時間。

今回は長かった。
十秒以上の映像。
そして、
視えた映像の女性が、
目の前にいた。

教えてあげようと声をかけた。

「ワタシは不幸が視えるのです」

「貴方の不幸を取り除いて差し上げましょう」

「貴方は危険です」

教えてあげた。
なのにあの女は…

「アンタの方がよっぽど危険よ!」

そう言って警察を呼びやがった…

警官に連れてかれる前に視た最後の映像。
彼女自身の最期の映像。

よりを戻そうとする男。

ソレを拒否する彼女。

家に帰宅。

突然鍵が開き、
覆面男が中に侵入。

彼女の悲鳴。
男の包丁。

切って斬って、
血まみれに。

裂いて割いて、
鮮やかに。

赤い部屋、
女性の部屋。
女性のものだった部屋。

散らばる彼女。
ばらばら彼女。
男のものだった彼女。

最後の最期の映像。

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