十†字†路
「いやー、すみませんね。少し遅れました」
「少し?三十分以上が少しかね?」

遅れてきたやる気の無さげな青年に言う。
すると彼は透き通る様な眼で視てきた。
まるで今の晴天の空の様な、深く蒼い眼で…

「…須佐野さんが来てからほんの数分しか遅れてません。だから遅刻したのはほんの少し、でしょ?」

相変わらずやり辛い相手だ。

「それは…やっぱり…」
「はい。俺の守護霊が教えてくれました」

ニコッと不敵に微笑む。

今では普通に話しているが、出会った当時は不気味な奴だった。

彼…斎藤六は守護霊に憑かれていた。

「相変わらず君の守護霊はなんでもお見通しなんだね」
「えぇ。須佐野さんが女運が無い事も知ってますよ」

開始早々、痛い所を突いてくる。

「まぁ今日はそれについて話を聞いて貰おうと思っていたんだが…女運が無い、か。確かに…」
「どうぞ話してください。まぁ、いいアドバイスができるかは保証しませんが」

そしてワタシは話した。
不幸な少女と出会い、
少女の不幸を救おうとし、
そして、
少女に逃げられた事を。

「……と、言うワケだ」
「成程。1つ、失礼な事を言わせてください」

そして彼は率直に言った。
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