夢の続きで逢えたら

「すいませんわざわざ…」

「気にしないで。今日の診察は三時までだから」


僕と先生は、

病院の外にあるベンチに腰掛けた。


「君…」


風になびく先生の白衣が音を立てる。


確か母さんの旧姓は…



「申し遅れました、矢田です」

「矢田?もしかして矢田さんとこのお孫さん?」

「はい」

「そうか。おばぁさんは元気?」

「はい。とても」

「昔はよく…」

「先生」



「…あぁごめん。話があるんだったね。それで聞きたいことって?」

「あの…耳硬化症について聞きたいんですが…」

「耳硬化症?」

「はい」



先生は何かを考えるように、

眉間にしわを寄せ、目を閉じて、腕を組んだ。




「どうしてその病名を?」


「実は……」







僕は今まであった詩野のことと、

浩二や大輔から聞いた話を全て先生に話した。


先生はまた何かを考えるように目を閉じた。




澄んだ青空を背景に漂う柔かな雲。

そんな壮大な景色が、

僕と先生の間に流れる重い空気の脇役だと思うと、

あまりにも不似合いだった。




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