夢の続きで逢えたら
第二章
鼓動
「一軌。勉強はしてるの?せっかく大学に入ったんだから、卒業だけはしてよね」
家に帰るなり母さんが言った。
「大丈夫だよ」
将来を考えてくれているのか、
学費の心配をしているのかはわからなかったが、僕はいつも通りそう答えた。
「そういえば浩二くん、就職先決まったそうよ。すごくいい企業みたい」
「……」
台所の水道を止め、
手を拭きながら母さんがこっちを見る。
「ちょっと、聞いてるの?」
「…聞いてるよ。良かったじゃないか」
僕はテレビのリモコン片手に、意味もなくチャンネルを変えながら答えた。
「ちゃんと連絡ぐらいしてあげなさい」
「わかったよ」
「アンタも来年は就職活動なんだから、聞いておくこともあるでしょ」
さっきは、「卒業“だけ”」って言ったくせに…
「僕には僕のやり方があるから」
「もぅ、また意地張って」
そう言って母さんは、また洗い物を始めた。
蛇口から勢いよく出る水の音が、僕の中の虚しさを膨らませた。
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