夢の続きで逢えたら
後ろを振り返ると、
苦笑いをして遠くを見据える浩二がいた。
「あれ?早かったね」
「まぁな。こんな大事な日に寝坊とは詩野ちゃんよっぽど自信があるんだろうな」
「だといいけど。で、浩二はなんで遅れたの?」
「俺?寝坊だけど?」
………。
外にいたら濡れるので、
とりあえず僕らは、少し歩いた所にある、
古びた喫茶店で待つことにした。
「こんないい場所あったんだな」
見ただけで、その神々しい大木を想像できる、味のある木製の椅子にテーブル。
所々に飾られた時代を感じさせる絵画や彫刻。
店内を淡く染める間接照明。
そんなレトロな雰囲気を醸し出すこの喫茶店は、
確かに浩二が好んで来そうな所だった。
「どう思う?」
頼んだコーヒーをズズズッとすすりながら、僕は眉を上げた。
「オーディションだよ。詩野ちゃん二次通過できるか?」
「ん〜、どうだろ。すぐ答えられる程、簡単なことじゃないよ」
「かたいな。お前はいつも。お前が信じてやらないでどうするんだよ」
僕は、口元に付いたコーヒーを親指で拭くと、
それからカップを皿の上へそっと置いた。
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