夢の続きで逢えたら

いよいよ明日、全てが決まる。

僕は、最初にこの場所で、

詩野と出逢った時のことを思い出していた。


何も変わらないその歌声がどこか懐かしく、

そしてどこか悲しげに僕の心に響いた。


かじかんだ小さな小さな詩野の手が赤く染まる。

メロディーに合わせて吐き出される白い吐息が、

一直線に夜空へと昇ってゆく。



もし、優勝することができたら、

詩野は遠い人になっちゃうのかな。


この場所で、

もう詩野の歌は聴けなくなるのかな。


あんなに応援してたのに、いざその時が来ると……


なんか複雑な心境だ。



本当は、僕の傍でずっと歌っていて欲しい。


それだけなのかもしれない。



テレビに出て、有名になって、そこで歌う詩野を、

僕はどういう想いで見るんだろう。



素直に応援できる?



でも、詩野はいつもこんなに楽しそうに歌ってる。


これを仕事にすることが詩野の夢なんだ。


そうすれば、もっと笑顔の詩野が見れる。



それでいいじゃないか。


それが僕の喜びなんだから。



だからやっぱり、明日必ずその夢を掴んで欲しい。








頑張れ。詩野。




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