夢の続きで逢えたら
「いいか一軌。よく聞け。まずこの『恋』の香りが漂う中で女を口説く。徐々に女は俺に魅力を感じ、そして気分が乗ってきた所で、こっちの『性欲』のお出ましってわけだ」
今日もまた溜息が漏れた。
「そんなのに頼るなんてカッコ悪いね。それに…」
「それに?」
「それに誘いを断られたらその時点でおしまいじゃないか」
その質問を待ってましたとばかりに、親指を立てながら、自信の笑みを浮かべる浩二。
「大丈夫。その時はこのアロマ缶を、相手に渡すだけでいいんだ。その香りで俺を思い出すと同時に恋をするんだ」
「ふーん。アホくさ。まぁ好きにすれば」
「なんだよ、冷めてるな。お前も買っといた方がいいぞ。好きな人くらいいるだろ」
「いいよ、僕は…」
夕方に僕らは解散した。
浩二は、
「早速使いに行くぜ」
とかはりきって、僕らの家とは逆方向の電車に乗った。
まさか買いたいのがあんな物だったとは、呆れてなんだか拍子抜けした。
「馬鹿ばかしい」
そう心の中で何度も呟きながらも、改札を出る。
本当はあの時、もっと詳しく聞きたかった。
でも、僕のプライドがそれを許さなかった。