夢の続きで逢えたら

――その日の夜中、

僕は母さんと父さんが寝静まったのを確認してから、

部屋でアロマ缶を詩野に渡す練習をした。



鏡を見ながら、

渡す時の視線、腕の角度、台詞。

あらゆるパターンを試してみる。




二時間に及ぶ練習の末、三つの候補まで絞ることができた。




少し前かがみに座り、斜め45度の上目使いで、

「これ。君に」

とクールにキメる。






下だけを見て、

「あの、よかったらこれもらって下さい!」

と両手で差し出すベタな少女漫画の主人公。






急に思い出したように、

「そうだ!これ、いつもこの公園に来てる、君のファンから預かったんだ」

と仲介人を装う卑怯者。




詩野のタイプはどれだろう。


やはり男らしくクールにキメるやつか…





…名前しか知らないのに、そんなことわかるはずもなかった。





僕にはもっと詩野を知ることが必要だった。



むこうだって、

何も知らない僕からこんな物渡されたら、

断るに決まってる。




断るだけならまだいい。

嫌われる可能性の方が大きい。




なんか…



順序がめちゃくちゃだ。




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