夢の続きで逢えたら

『ついていい嘘もある』という言葉をよく耳にするが、


僕は、そんな嘘あるはずないと思っていた。



でも、今の詩野の嘘は思いやりのある温かい、そして『ついていい嘘』だった。









詩野は次の駅で降りなかった。






それから二十分ほど経過すると、

詩野はようやく電車を降り、

駅を出て、すぐ左手に見えるコンビニへと入っていった。


女性向けのファッション誌に没頭する詩野の後ろを、なにくわぬ顔で通る。


一瞬だったが、

ページの右端にデカデカと『男をオトす10の法則』と書いてあるのが見えた。



詩野の外見からは想像できないような内容に、

驚いた半面、好きな人がいるのかという不安もあった。



詩野はその雑誌を購入し、コンビニを出た。


五分ほど歩くと、今度は小洒落たカフェに入った。


僕も少し間を置いてからその店に入り、

詩野の死角になっている席へ座り、

意味もなく、大学で使っているノートを広げ、『ただ勉強をしに来た学生』を装った。




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