夢の続きで逢えたら
さっきまで、ちょっぴり不機嫌に見えた詩野の表情が緩んだ。
意外な答えに戸惑いながらも、
「そっか。ありがと」
と言って、今度はニコッと笑って見せた。
「あなた、この前公園で最後まで残ってた人でしょ?」
「覚えてたんだ」
「歌を聴いてくれる人で私の名前聞いてくれたの、あなたが初めてだから」
僕は右手で頭をボリボリ掻きながら、照れ隠しに、
「そっか」とだけ言った。
「それじゃ私、もう行くね」
「え?あ、うん」
一瞬、どこに行くのか、疑問に思ったが、
今日は詩野と会話できただけでも満足だった。
僕は「それじゃ」と言って、右手をテーブルの脇から小さく挙げた。
店の出口で、足を止めた詩野がこちらに振り返る。
「また聴きに来てね!」
そう言って、笑顔で店をあとにした。
自分でも顔が熱くなっているのがわかる。
午前十一時の、
詩野を照らす眩しい太陽が、
僕の想いをさらに加速させた。
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