夢の続きで逢えたら
「出かけるんだよ」
「どこに?」
「どこでもいいじゃん」
「教えてくれたっていいだろ」
僕は両ひじを膝の上で支え、うなだれるように下を向いた。
他人の恋にはドタドタと土足で踏み込むくせに、
僕は、昔から自分の恋の話はしたがらない性格だった。
だから詩野の話はしたくなかった。
また溜息をひとつ。
「わかったよ。行くよ」
「よし!決まりだな!」
僕ら三人は約束通り七時に、その店へ集まった。
「…そこでだ。俺はこう言ってやったんだよ。『そんな質問させてごめんね』ってな!」
「大輔お前なんだよそれ!かっこいいと思ってんの!?」
浩二がゲラゲラ笑う。
「なぁ、一軌。お前なら何て言う?そういう時?」
「え?何が?」
「だからー、聞いてなかったのかよ。女の子に『友達と私、どっちが大事なの?』って泣きながら言われた時だよ!」
「さぁ。何て言うかな?愛情と友情は別物だから比較なんかできないよ」
浩二がまたゲラゲラ笑う。
「ハハ!くっさ!なんだよそれ!お前も大輔と変わんねーなー!」
「じゃあ浩二なら何て言うんだよ」
「そりゃあお前、ビシッと『』」
「なんだ一軌、元気ないな」
一杯目のビールを、まだ半分も飲み終えていないところで、浩二が言った。
「そう?普通だけど」
「本当は今日予定あったらしいよ」
グラス片手に、横目で浩二を見ながら大輔が言う。
「ふーん。で、何があったんだよ」
「なんだよ二人して。別に何もないよ」
「なんだ?女にでも会いに行く予定だったか?」
浩二が注文したスルメを、口でくちゃくちゃさせながら僕に言った。
僕はまだ半分以上入っていたビールを一気に飲み干し、
そのままグラスをテーブルに叩きつけた。
「ちげーよ!」
驚いた二人は、
何か怖い物でも見るかのように僕を見た。
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