夢の続きで逢えたら
「各務くんは?」
「え?僕?」
「夢とかないの?」
やっぱり…。
会話の流れからして、僕に聞いてくることはわかっていた。
この話題を始めたのも僕だ。
間違っても「君と付き合うこと」なんて言えない。
笑われるだろうし。
黙り込む僕を見て詩野が言った。
「わかった!弁護士だ!昨日ノートに法律のこと書いてあったもんね」
「え…ま、まぁ…一応…」
「そうよね。軽く口にできるほど簡単なことじゃないもんね」
「う、うん…。でも、それなら歌手も同じだと思うけど」
「そうね。何百万っていう人が目指してる。そこで夢を掴めるのはほんの一握り…」
初めて詩野が寂しそうな表情を見せた。
この子も不安を抱えてるんだ。
初夏の生ぬるい風になびく髪を耳にかけながら、
視線を落とす詩野に僕は言った。
「大丈夫だよ。詩野の歌はすごくいいよ。うん…すごくいい」
今、素人の僕に言える精一杯の励ましは、これくらいしかなかった。
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