その手で溶かして
「真雪、聞いてる?無理はしなくていいよ。」
「遠藤君。私で良ければ彼女にして下さい。」
どうしてこの時、こんなことを言っていたのか、それはいくら考えてもわからない。
ただ、遠藤君の穏やかな口調に苦しさが、また少しだけ治まっていた。
「ありがとう。すごく嬉しい。」
「お礼を言われても、困ってしまう。」
「そうだよね。大切にするから。」
遠藤君はそう言いながら、私の手を取り、握り締めた。
汗ばんでいた私の手がより一層熱を帯びる。
大切にすると言ったのは、私のことだろうか、それともこの関係のことだろうか。
どちらにしても大して変わりはないのか。