その手で溶かして
「携帯貸して。」
「はい。」
差し出された手の平の上に、私は携帯を乗せた。
携帯同士を向き合わせて、遠藤君は一体何をしているのだろう。
覗き込むように私は遠藤君が持つ携帯に近づいた。
「これで完了。」
「えっ?」
こんな短時間でメールアドレスや電話番号2つ分を入力してしまうなんて、遠藤君はよっぽど携帯の操作に慣れているのだろう。
今時の高校なら当たり前のことか。
私だって“今時”と呼ばれる年代に属してはいるのだが、きっとその括りには入らないだろう。
“今時の高校生なら”なんて言ってしまう辺りが、その括りの人達を外からの目線で見ている証拠。
私がその渦中にいないことになる。