その手で溶かして

「美味しい。」



「良かったわ。沢山あるからね。」



湯気のせいで眼鏡が曇り、ママの顔ははっきりとは見えていないけど、ママは笑っていない。



今日もいるはずの場所にいない人のことを考えながら、私の存在など見えていないのだろう。



そんなことにすら慣れてしまった私はただ黙々と料理を口に運ぶ。



「もう少し早く帰って来れないのかしら?」


後少しで食事が終わろうとしていたその時、ママが突然口を開いた。



ママが私の存在を認識してしまった。



後少しで逃れられるはずだったのに……

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