その手で溶かして

お風呂に入る前に、ミネラルウォーターを飲みたいけど、こういう時にこのドアが邪魔をする。



さっきは便利だった、このドアが今は疎ましくてたまらない。



出来るだけ、音を出さないように静かにゆっくりとドアを開ける。



ギッギーっと静かな部屋に響き渡る錆びれた音。



真っ直ぐにキッチンへと向かい電気をつけると、そこには今日テーブルに上がっていた物が散乱していた。


割れた食器に、ぐちゃぐちゃになった料理が床一面。



こうなることはわかっていたけど、この光景は何度見たって慣れるものではない。



私はスッと目を背け、冷蔵庫を開けた。



見なかったことにしよう。


見なかったことにしなければいけないんだ。



ミネラルウォーターを取出し、体の向きを変えると、そこにはパパが立っていた。



「ヒャッっっ。」



突然の出来事に私は持っていたペットボトルを落としてしまう。


そして、そこにいたのがママではなくパパだってことに安心した。


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