その手で溶かして
それからは……
どちらから会話をするわけでもなく、ただ時が流れて行くのを感じていた。
汗ばんだ体に心地よい風が吹き付けるたびに、ふとママはこのまま帰ってこないのではないかという不安に駆られる。
もしも、このまま帰ってこなかったとしたら……
パパはどうするのだろう。
ママに戻ってくるように説得するのだろうか。
それとも、喜んでママとの決別を選ぶのだろうか。
どちらにしても、私には受け入れられない。
ママがあの家にいないことなど、想像したくもなかった。
静かだな。
住宅街の中にあるこの場所は夜になると静寂に包まれる。
昼はそれなりに人通りも多く、賑やかな音が至るところから聞こえてくるけれど、夜は人がいなくなってしまったかのように静かだ。
そんなこの場所に住み慣れている私には、これが当たり前のことで、寧ろこの静寂が好きだったりする。