その手で溶かして

もう電話を切ってしまいたいけれど、そんなことは勝手すぎてできない。



「真雪、今どこにいる?」



「いつも別れる道にいる。」



「寒くないのか?」



「考え事しているときは感じなかったけど、急に寒くなってきたかも。」



「真雪は賢いのにどこか抜けてるよな。」



それは、私は賢くないからだよ。



頭が良くなりたくて努力しているけれど、本来賢くない私は所々でボロが出てしまう。



「真雪。」



電話から聞こえる声と重なって、私の背後からも名前を呼ばれた。



「えっ?」



振り向いた先には携帯電話を耳に当てた遠藤君が立っていた。



「どうしたの?」



「どうしたの?はこっちの台詞なんだけどな。」



そう言いながら苦笑いをする遠藤君を見て、少しだけホッとした。



「ごめんなさい。訳のわからない電話をして。」



「それは嬉しいよ。どんな理由でもこうして真雪から連絡くれるなんて。」



今のこの状況には有難い言葉に私は軽く微笑んだ。

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