その手で溶かして

「お待たせ。」


と言って、腰掛けた遠藤君が持っていたのは、沢山の湯気をのぼらせているティーカップ。



「真雪、紅茶飲めるよね?」



「大丈夫よ。ありがとう。」



「これを飲んだら少しは温まるな。」



「そうね。」



小さな頃、絵本で見たような洋風の広い家に、お洒落なティーカップ。



そのすべてが私に現実を忘れさせてくれる。



ほんの一瞬……



その一瞬が私にとっては大切な時間だったりした。


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