その手で溶かして
節目
「卒業生が入場します。」
吹奏楽部の生演奏の中、体育館へと足を踏み入れる。
入学式や卒業式は一体何のために行われているのかわからない私は、ぼんやりと前の人に続いて足を動かしていた。
今は私の卒業式の真っ最中。
高校生という囲いから解放される喜びはあっても、誰かと別れる淋しさや、この場所への名残惜しさなど微塵も感じない。
私は今日高校生を卒業できる。
これでまた一つ柵から脱出できる場所へと近づいた。
着席するなり、校長先生や来賓の長い挨拶があり、卒業証書授与が行われる。
名前と同時に卒業後の進路まで読み上げられるのは、進学校ならではなのだろうか。