その手で溶かして

地下鉄のドア付近に立ち、私はガラス越しに外を見つめている。



外と言っても、地下だから景色は何も見えず、ただ暗闇が続くだけ。



手を伸ばせば、すぐに何かに触れるかもしれないし、どこまでも何にも触れることは出来ないかもしれない。



それでも暗闇だから、その深さは誰にもわからない。



そんなことに物凄く落ち着いてしまう私がいた。



先が見えないからこそ、真っ直ぐに背筋を伸ばし、この場所に立っていられる。


私は自分の未来など描きたくもなかった。



ただ毎日が過ぎていけばそれでいい。



いつまでもこうして暗闇が続くことを願う。
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