その手で溶かして

「私、こういう所に来たの初めてだし、この使い方もわからないの。」



「えっ?マジで?」



まじまじと見つめられた女の子の目元は化粧で塗り潰されている。



バザバサと音を出しそうなまつ毛が、何度も閉じたり開いたり。



「この歳でカラオケ初めてなんて、嘘みたい……」



本当に驚いているのか、消えそうな声で呟いた女の子。



そんなこと言われても返答に困る。



私だって貴方達みたいな高校生は初めてだなんて言う訳にもいかないし。



私が言葉を続けなかったために途切れた会話。



お互いどうすることも出来ずに見つめ合っていると


「真雪ちゃんを困らせないの!」


と女が私達の間に割り込んできた。


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