その手で溶かして

サワと肩を並べて校舎の中へ入ると、騒ついていた私の心がやっと落ち着きを取り戻す。



学校が好きってわけではないけれど、学校という存在が心地よい。



行かなければいけない場所がある。



やらなければいけないことがある。



拘束感を感じてしまう人が多いのだろうけど、私にはこの拘束感がたまらなく有難い。



私自身が何も持たない人間だからだと思う。



やりたいことがあるわけでも、得意なことがあるわけでもない。



言ってしまえば、自分の意志さえも強く持ち合わせてはいなく、フラフラと現状に流されている。



そんな私にはこうして毎日決まった生活を与えてくれる学校という存在が心地よいのだ。

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