その手で溶かして
広い敷地内で私は一人、本を片手にお弁当を広げていた。
久しぶりに読む、参考書以外の本。
私は空想の世界へと、どっぷり浸かって行く。
そういえば、この主人公は遠藤君に似ているような気がする。
卒業式のあの日から、一度も会っていない遠藤君。
会っていないどころか、連絡すら取っていないから、今どこで何をしているのかさえ、彼女の私にはわからない。
あの日を境にもう彼女ではなくなったのかもしれないけれど……