その手で溶かして

「酷いでしょ。だから、今日、拓海に会って理由を聞きたい。」



「理由を聞けたら、冷たいとは思わないの?」



「それは……理由によるかな。」



やっぱり、よくわからない。



「私には、ナオの言ってることがよくわからないわ。」



「えっ?どの辺が?」



いきなり、身を乗り出すように顔を近付けるナオに驚いた。



こんな至近距離で、顔を見られるのは好きじゃない。



私は少し後ろに椅子を下げ、紅茶を口に含んだ。



もうすっかりと冷めてしまった紅茶は、香りなんかはまったくなくて、口の中には苦味だけが残ってしまう。


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