その手で溶かして

「私ね……拓海のことが凄く好きなの。拓海には相手にされてないのはわかってる。でも、でも……」



ナオがウミを好きなことは知っている。



こうして会うたびにウミのことを、どれだけ好きか聞かされてきたんだ。



話の内容は理解できても、私にはどうしてもナオの言っている“好き”という感覚がピンとこないため、ナオの話を覚えているといったほうが正しいのかもしれないけれど……



「今日、駄目だったら諦めるから。」



「えっ?」



「今日、会って話したい。でも、話して駄目だったら、もう拓海のことは追い掛けない。そう決めたの。」



「そう。」



「だから……」



「わかったわよ。」

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