その手で溶かして
寒いけれど、5分くらいなら仕方ないな。
日が落ち始めた、この時間帯は風が吹くたびに体温を奪われているような気になる。
トレンチコートだけでは寒過ぎる。
というか、ダウンを着たくなってしまうほど、この街の春風は冷たい。
「真雪ちゃん、寒いでしょ?ごめんね。」
爪先を見つめながら、ナオは肩を窄める。
「寒いのはナオのせいじゃない。」
「そうだけど……真雪ちゃんは凄く優しい。ありがとう。」
私は優しくなんかない。
いつも自分のことを優先に考えているだけのこと……
それなのに、そんな顔でそんな事を言われたら、なんて返事をしていいのかわからない。