その手で溶かして
窓側の後ろという特等席を、くじ引きで引き当てた私は、ホームルームが始まるまでの時間を景色を眺めながら過ごす。
窓ガラスを一枚隔てたこちらとあちらでは気温がかなり違うのだろう。
そうはわかっていても、温かいこちらから、あちらの景色を眺めていると、雲一つないあちらの気温も温かいのではないかという錯覚に陥ってしまう。
人の感覚とは本当に不確かなもので、目に見えるものすべてを見えたままに感じ取っていたら、勘違いばかりの日常になってしまうだろう。
そうならないために、脳というものが存在しているのだろうな。
私の脳はここ最近、ちっとも進化を遂げてはくれないけれど、それはそれで仕方がない。
あぁ〜やっぱりあちらも温かそうで目蓋が下がってしまいそうだ。