その手で溶かして
ウミに会うのが嫌ならば、登校時間を変えれば済む話なんだけれど、それはそれで私の堪に触る。
私は高校生になってから、毎日この時間に家を出て、同じ時刻の地下鉄に乗っている。
それなのに、ウミのせいで自分のスタイルを変えるなんて御免だ。
ウミと会うのが嫌か、自分のスタイルを変えることが嫌か、なんて天秤にかけるまでもない。
私はウミに左右される人生は送らない。
たかが幼なじみに左右されるなんて、堪らなく不愉快だ。
そんな日常を繰り返す中、6月の半ばに差し掛かる。
木々には青々とした葉が生い茂り、照りつける太陽が力を取り戻したように、私達を温かく包み込んでくれる。
まだ冬服を着ている私には少し暑すぎるくらいの気温になってきた頃、帰りの地下鉄で偶然ウミに出くわしてしまった。