その手で溶かして
今までは言ったことがない言葉だけど、今日はどうしても使ってみたくて、心の準備をしてから店内へと入った。



通帳の数字が私を浮かれさせていたのだと思う。



「お疲れ様です。」



大きな声でそう言いながら、休憩室のドアを開ける。



「お疲れ。」



私の初めての言葉に返事をしてくれたのは、懐かしい聞き慣れた声だった。



「えっ?ウミ……?」



「あーシフト変わった。店長は急用だって。」



「そう。」



気まずい気持ちになる反面、鼓動がドクドクと早まって行くのを感じる。

< 341 / 442 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop