その手で溶かして

暑くなんてないはずなのに、手のひらに滲みだす汗。



顔だけをウミへと向けると


「話があるんだ。一緒に帰ろう。」


と私を通り越しながら口にしたウミは、スタスタと休憩室を出ていった。



一緒に帰ることを承諾なんてしていない。



それなのに……


私の返事など聞くつもりがないようなウミの態度に少しだけ苛立ちを感じながら、私も外へと歩みを進めた。



暗やみの中でも確認できるウミの姿。



今度は私がウミを追い越して、前を歩く。



足音からして、ウミは私の少し後ろを歩いているのだろう。



話があると言っておきながら、ウミの声は一向に聞こえてこない。

< 385 / 442 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop