その手で溶かして

背中にばかり意識を集中させながら歩いたせいか、どっと疲れてしまった。



我が家までは後少し。



視界に入る距離までに来たところで、後ろから腕を掴まれた。




「少しだけ話そう。」



「時間がかかりそうなら、疲れているから今度にして。」



ウミを一切見ずに私は返事をした。



「今日じゃなきゃ駄目なんだ。時間はとらせないから。」



冷たい口調のせいか、思わず頷いてしまった。



断りたいのに……



断るつもりだったのに……

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