その手で溶かして

話が終わった私達の間には、長い沈黙が続いた。



こんな時、私はどうすればいいかわからない。



人間付き合いというものから、逃げてきた私は、このような状況に遭遇すると、必ず席を立つ。



“無言”という圧力に耐えられないのだ。



でも、今日は……



今は、席を立つわけにはいかない。



“助けて”と言葉にできない私ができることは、このソファーに座り続けること。



例え、ウミにどう思われようとも。



「ユキ?」



初めての試みに、固まったままの私の名前をウミが優しく呼ぶ。



返事をしたいのに、何故か声がでなくて、目線だけをウミへと向けた。

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