その手で溶かして
私の返答に表情が緩んだウミを見て、ホッとした。
昔から、ウミの隣は何故か落ち着いた。
何故、引き止められたのか、聞くわけでも、話すわけでもなく、私達に再び訪れる沈黙。
そんな中、私は昔の記憶へとタイムスリップしていた。
楽しかった、あの頃の記憶がゆっくりと私の脳内を巡る。
何時間もそうしていると、窓からは光が差し込んできた。
それでも、現実には戻りたくなくて……
そんな、私は物音ときつい香水の匂いで我に返った。
「ただいま。あら?お客さん?」
居間の扉を開け、私を現実の世界へと戻したのは、久しぶりに見る、ウミのお母さんだった。