その手で溶かして

幼かった私の記憶の中では、ウミのお母さんの印象は今とまったく違う。



長い髪の毛を後ろで束ね、いつも元気のいいウミのお母さん。



ママの優しい笑顔とは違う、力強い笑顔も私は好きだった。



けれど、今私の目の前にいる女性は……



本当にウミのお母さんなのだろうか?



長い髪の毛は綺麗にカールされ、若作りと言ってしまいたくなるようなメイク。



そして、何よりも驚いたのが、きつい香水の匂いに混じったアルコールの匂い。



「お帰り。」



当たり前のことではあるが、同一人物とは思えないほど変わってしまったお母さんに、普通に話し掛けるウミに違和感を感じてしまう。



「あら。ウミの新しい彼女?」



少し嫌味っぽい口調に、含み笑いは、私の知っているお母さんじゃない。



ウミのお母さんは、まっすぐで……



清潔感があって……



こんなふうなことを言う人ではなかった。



「何言ってんだよ。ユキだよ。隣のユキ。」



「えっ?……真雪ちゃん?」



ウミの言葉を疑うように、私の顔を凝視するお母さんに



「ご無沙汰しています。」


と頭を下げた。
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