その手で溶かして
お母さんの言葉に体が固まる。
ウミは、もう声すら出せないでいる。
大好きだった両親の真実の形。
尊敬していたお父さんの真実の気持ち。
人が幸せを手にするためには、やはり“嘘”が必要なときもある。
隠し事や嘘は大切な人を裏切ることだと、ママが言っていたけど……
それは違う。
相手を傷つけないための嘘や、幸せを手にするための隠し事は必要だ。
だって、ウミは今更こんなことを知る必用はないのだから。
亡くなってしまったお父さんを尊敬したまま、大好きだったままで良かったはずなんだ。
ウミの反応に気にも止めないお母さんは坦々と話を進めて行く。
ウミの心は置き去りにされたままなのに。