その手で溶かして

眼鏡

ポカポカと暖かい日差しを体いっぱいに浴びながら、私は握り締めたペンを動かす。



滑らすようにノートに字を書いている自分に酔ってしまいそうなくらい、こうしている空間すべてが愛しい。



数字と記号ばかりが並ぶノートの上は私の存在を否定しない。



正しい公式さえ当てはめれば、必ず私が正しかったんだと教えてくれるから。



放課後の図書室を訪れるのは私と図書委員くらいのもので、室内はいつだって穏やかな空気が流れていた。



何時間でもこうしていたいけれど、そろそろ学校を出なければ夕食の時間に間に合わない。



私は慌てて支度をし、図書室を後にした。

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