その手で溶かして
「ここにいて邪魔じゃない?」
「邪魔ではないよ。ただ、どうしてここにいるの?」
もっと別の聞き方をすれば良かった。
これでは遠藤君を邪魔だと言っているみたいだ。
「なんだか、一人になりたい気分でここに来てみたんだ。図書室って誰もいないイメージがあるから。」
「確かにいつも誰もいない。」
遠藤君は私の言葉をそれほど気にしてはいないみたい。
「どこに座ろうかうろついていたら、気持ちが良さそうな席を見つけた。でも、先約がいてガッカリしたよ。」
「私?」
自分に向かって指を差すと、遠藤君はコクリと頷いた。
「でも、よーく見てみると真雪で、嬉しくなって話し掛けてしまった。」
「何よ。それ。クラスでいつも顔を合わせているじゃない。」
私は例え誰であっても、相手から話し掛けてこないかぎり、教室で会話をすることがなかった。