その手で溶かして
何年ぶりかに、遠藤君と図書室で会話をしてから1週間近くが過ぎようとしていた。
図書室に毎日現われるようになった遠藤君が、自然と私の日常に加わった。
大きな長方形の机を挟んで斜め向かいに座っているからといって、ずっと会話をしているわけではなく、一日に一言二言、遠藤君の会話に返答をするだけ。
私はいつものようにペンを動かし、遠藤君は本を読んでいる。
ただ、一人だった空間に遠藤君という存在がいるだけで、目を瞑ってしまえば一人の頃となんら変わりはない。