その手で溶かして

今日ここでウミの姿を見たからといって、何かが変わるわけではない。



敢えて、目を背けてきたことのほうが、ずっと不自然だ。



遠藤君の言う通り、私達が夢を語り合ったのは幼かった頃なのだから。




ピッピッー



「おっ。始まるぞ。」



大きな笛の音と共に選手達が、黄緑色の芝生の上を駆け巡る。



探さなくてもわかってしまうウミの姿。



「拓海の背番号は確か……」



「9だと思うよ。」



「そうだ。そうだ。頑張ってるな。」



確かに頑張っている。



試合に間に合わないかもしれないと、半べそをかいていた人物と同一だなんて、疑ってしまうほどたくましい。


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